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生もの商売

 春一番が吹いてその翌日には雪が降るような,不安定な天候の中にも,通勤路の傍らには梅が薫り高く咲き誇っている── 確実に春に近づいているのだ。と,のんびりしているわけでもなく,学部と法科大学院との入学試験やら修士論文の審査などで,それなりに慌しい間を縫って,何とか原稿書きの時間を見つけようとあがく毎日だ。
 そのさ中,出版社より教科書の第二刷が刷り上った報告があり,見本2冊が届いた。最も気になっていた,心神喪失者医療観察法関係の不正確な箇所がこれで訂正され,ほっとした。この際,それ以外にもいろいろと手を入れさせてもらった。
 しかし,昨今の世相もあって,犯罪学の分野では立法と実務とそれぞれに動きが激しく,気を抜くとすぐさま情報が古くなってしまう。まさに生ものを扱っている感がある。
 先日,安城市の事件に関連して書いた,「更生保護会の施設を6ヶ月間は保障する」との記述も,間違っていた:犯罪者予防更生法の2002年の改正で,必要な場合,さらに6ヶ月の滞在が可能となっていたことを見落としていたのだ。
 この調子では,まだ多くのミスがあるのではないかと怖くなる。
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by kriminalisto | 2005-02-25 00:51 | 日記・コラム・つぶやき

イノシシと間違えて豚を射殺

 まあ,考えようによってはこれも殺伐とした事件だが,ネット上の配信記事で目に付いたのがこれ
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050218i315.htm
 鳥獣保護法や銃刀法違反の点を除くと,これは単なる窃盗のように思うのだが── つまり,近所の豚舎から逃げ出した豚なのだから,これはまだ所有者の占有が続いていると見るべきだろう。それとも,茨城県警大宮署はこれを「逸走ノ家畜」(遺失物法12条)として占有離脱物にあたるとしたのだろうか。しかしそうであっても,刑法254条の罪は成立するように思われるのだが。
 イノシシだと思って飼い豚を射殺した、というのは「客体の錯誤」の問題。したがって過失の器物損壊罪(刑法261条)だけが残り,それは不可罰(過失器物損壊罪などは無い)。これが逆で,飼い豚を射殺しようとして,撃ってみたら(野生の)イノシシだったというのであれば,器物損壊罪は未遂で,これまた不可罰となる。教室での事例としてもいまひとつ面白くないか。
 捕まった男は,仲間と計4人で早朝からイノシシ猟に来ていたが成果が無く,車で帰宅途中に畑にいた豚をイノシシと見間違えて発砲した,とのこと。調べに対し,「仕留めてから豚と気づいた。誰かが飼育していると思い,慌てた」と話しているが,件の豚は別の場所の河原で解体して,ちゃんと持ち帰ったという。仲間と分けたかどうかは不明。
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by kriminalisto | 2005-02-18 22:54 | 日記・コラム・つぶやき

今度は寝屋川市の小学校で

 2月14日午後,大阪府寝屋川市の市立中央小学校に包丁を持った男が侵入し,校舎2階の職員室にいた教職員3人を刺し,うち1人を刺殺した。児童らにけがはなかった。110番で駆け付けた寝屋川署員が,職員室にいた市内に住む17歳の少年を現行犯逮捕した。現在のところ,少年は調べに対し黙秘しているとのことで,詳しい状況や動機などは不明,とテレビが伝えている。 
 誰もが2001年の大教大付属池田小学校の事件を思い起こしたことだろう。あの事件の場合,犯人・宅間は"エリートの子供"への反感を理由として口にしていたが,本当のところを語りつくさないまま死刑になってしまった。あの事件以来,さまざまな対策が採られたはずなのだが。同時に,新聞やテレビを騒がせる学校侵入事件もあとを絶たない。
 文部科学省が昨年発表した数字では,02年に外部者が学校に侵入した事件は2,168件に達したとされるが,学校が狙われる理由は無防備な犠牲者になりやすい児童がたくさん集まっているからだろう。学校の地域社会への開放が必要と指摘される一方で,学校の安全をいかに確保するかという,困難な課題の解決に迫られているわけで,今後,たとえば警察官や父母の校内パトロールなども導入を迫られるかもしれない。
 しかし,今回の少年が狙ったのは教師だけだったようだ。少年は同小の卒業生で,今回も特定の教員に会いたいと申し出て,教員室へ案内する教員の背後から襲いかかったというが,彼の中には何らかの恨みが凝縮されていたのだろうか。しかし,17歳の少年というが,高校生でも有職者でもないようで,そのこと自体すでに,何か複雑な事情がありそうでもある。
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by kriminalisto | 2005-02-14 22:30 | 日記・コラム・つぶやき

安城市での幼児殺害事件

またしても,想像を絶する事件という他ない。
  愛知県安城市のスーパーで4日に起きた幼児殺害事件で,逮捕された34歳の容疑者は,模範囚として先月末に豊橋刑務支所を仮出所したばかりだったとのこと。「数日前からイライラしていた」と言い,憂さ晴らしで,子供を無差別に狙った犯行らしい。現在のところはまだ断片的な報道しかなく,当然何を言うこともできそうにもないが,それでも気にかかる二三のことを。
  いくつかの報道では,容疑者は「ここ数日頭の中で『死んでしまえ』とか『人を殺せ』という雑音が聞こえた」などと言っているようだが,もし事実なら,これは典型的な統合失調症の症状ではないか── しかし,抵抗できない幼児を狙っていることとか,犯行後に市中に逃走するなど,きわめて正常な判断もしている。窃盗などで何回かの有罪判決を受け,一般の刑務所に入っていたということは,少なくとも過去には精神障害を疑わせる所見はなかったということか。
  容疑者が精神障害者であった場合とそうでなかった場合と,いずれであったとしても,この種の犯罪を予防することは実際には不可能ではないだろうか。さまざまに喧伝される保安処分だが(心神喪失者医療観察法はこの夏にも施行されるだろうが),それとて,今回のように突発的に/初めて犯罪行為を行った者に対しては意味を持たない。責任能力には影響しないと考えられている人格障害を持つ者による意識的な幼児殺害など想像したくもないが,その予防など,どんな方法がありうるだろうか。
  それにしても,容疑者が問題のスーパーに行ったのは,暖を取るためで,所持金はなかったとの報道には,考え込んでしまう。職探しがうまく行かず,住むところも無く,夜は廃車の中で寝て,安城には(盗んだ?)自転車でやってきたという。冬の最中に刑務所を1万円ほどの所持金しかない状態で出され,身よりも居場所もなく,職探しもうまく行かないという状況がそもそも困惑させるものだ。何か確実な犯罪を実行して,衣食住の心配のない刑務所に戻ろうと思っても不思議ではない。こんな場合,刑務所出所に先立って帰住先を明らかにさせ,それがない者は更生保護会の施設を6ヶ月間は保証することになっているはずなのだが,その関係はどうなっていたのだろう。また,仮釈放なのだから,保護観察所がかかわって保護司が付されているはずなのだが。
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by kriminalisto | 2005-02-06 22:17 | 日記・コラム・つぶやき