人が手を振って歩くときには、普通、右足を前に出すときには左手を振り出し、左手を後ろへやりながら左足を前に出し始める。歩くときはあまり手を振らない人も、ランニングの時には手を足とは逆の方向に振りながら走ることだろう。
だが、これまた時代の、したがってその社会の文化状況の、産物なのだ。その証拠に、たとえば江戸時代の武士の歩き方は、右足を出すときに同時に右手右肩を前に出し、まさに「肩で風を切って」歩いた(日本法制史のOh先生の話では異説もあるそうだが)。現代人のような歩き方は、むしろ、「丁稚歩き」と軽蔑されたそれだとのこと。 要するに、ごくありふれた動作でさえ、時代と社会に規定されているということで、それを示すための好例としてこの「なんば歩き」に関心を持っている。 もう一つは、人の顔つき。古いニュース映像などを見ていて思うのは、日本人の顔つきは変わったということだ。幕末の志士までさかのぼらずとも、戦前の日本人の顔つきは一様に険しい。カメラを意識してない場合でも、それは他の人々と世界に向き合い、それに抵抗している人間の顔だと感じる。昨今の街頭風景によく見られる、何の緊張もない、緩んだ顔つきとは明らかに違っている、と。 顔つきも、時代とともに変化したのだ。(そういえば、「葉隠」の中に、忠義のために自分の顔を変えるという下りがあった。まったく別の話だが。) ────テレビのニュース報道の間に表示された、同年代の男性の子供時代の写真からの連想。 小さな大人のようなその姿が、それとそっくりな当時のガキ大将どものことを思い出させ、そういえば、最近はあんな子供の顔つきは見なくなった、と。
by kriminalisto
| 2004-04-21 14:22
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