メディアが一斉に伝えるところでは,愛媛県で昨年行われた生体腎臓移植手術をめぐって,臓器売買の事実があり,臓器移植法違反で元患者と仲介者の2名が逮捕されたとのこと。( http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061001it11.htm )
約束した対価が実際に支払われなかったことから,臓器提供者が警察に相談するなどして発覚したようだが,やはりそうか,という感想だ。 一方に臓器を必要とする人がいて,他方には提供したい人がいる──問題は,その両者の間に存在する経済的な格差だ。移植医療は無料ではない。そして,間違っても,豊かな側が貧しい側に臓器を提供するようなことはないのだ。 腎臓移植手術の場合,健康保険の適用を受けても,予後の対応を含め1年で600万円程度の負担が必要とされている。となると,そのような医療を受けられる人と受けられない人とが生まれるのは当然だが,ここにはさらに,提供される臓器の少なさから来る「臓器獲得競争」が生じざるをえない。つまり,高い値段をつけた人のところに,優先的に臓器は行くのだ。そんなことはない,との叫び声が起こりそうだが,しかし,腎臓提供者を求め中国や東南アジア諸国で移植手術を受けようとする日本人が多く存在することをどう考えるべきなのだろうか。国内でも,実際には,今回の事件のような事例は多く存在したのではないだろうか。 「臓器移植ネットワーク」のような団体の活動が,きちんとした透明性を獲得し,日本社会で広く受け入れられるまでには,まだまだ時間がかかりそうだ。そしてその他方で,死後の臓器提供を自ら選ぶ人を,脳死論議の性急さが戸惑わせている。
by kriminalisto
| 2006-10-02 00:13
| 日記・コラム・つぶやき
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