思いがけずの 辻 邦生

中学・高校と一緒だったA君が郷里の国立大学で医学部の教授となり,専門が皮膚科で頭髪の権威だということは知っていた。毎年交換している賀状でも,当方の頭髪が無くなってしまう前に,画期的な新薬の発明をと,祈らんばかりに頼んできたものだ。
知らなかったのは,彼が辻 邦生のフアンで,その全作品に惚れ込んでいたことだ。
郷里で開かれた同窓会の同じテーブルで,偶然にこの事実を聞き,とたんに嬉しくなって,思わず二人で話し込んでしまった。未完に終わってしまった『フーシェ 革命暦』の大構想,『春の戴冠』に描かれたフィレンツェ,『西行花伝』での西行の描き方,『安土往還記』での信長のいかに魅力的なことか。そして,何よりも『背教者ユリアヌス』! 
かつて大学の記念祭典にノーベル賞作家のOを呼ぼうという動きがあり,彼が強く反対して辻 邦生を推薦したということもあったとのこと。当然のことだろう,およそ比較にならない。圧倒的な言葉の力,言葉の美しさ──そう,すべての若い人たちにきちんと読ませるべきは,まさにこれらの本なのだ。
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by kriminalisto | 2006-08-15 19:55 | 日記・コラム・つぶやき
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