『民衆から見た罪と罰』

 興味深い本が登場した──このたび花伝社より刊行された村井敏邦教授の『民衆から見た罪と罰』だ。
 元になっているのは,教授が1998年から2000年にかけて法学生向けの雑誌『法学セミナー』に連載した文章だが,残念ながらその当時には気がつかず,今回初めて全体を通して読むことができた。
 読んでの感想は,単に「興味深い」ばかりでなく,驚くばかりに充実した内容の好著だというものだ。日本の古典からドストエフスキー,聖書に至るまでの広大な分野にその素材を求め,興味深い事実とその分析を示して,民衆(非法律家)の目から見た犯罪と刑罰,刑事裁判,司法制度などを浮かび上がらせている。
 村井教授といえば,学界その他で活躍しておいでだし,連載の頃はたしか刑法学会の理事長ではなかったか。その忙しいさ中に,よくこれほどに多くの文学作品(とくにわが国の古典)に目を通されたものと感心する(もちろん,にわか仕込みでなく,普段からの素養だろうが,それにしても文章化する際には元の文学作品などを読み返して確認されただろう)。到底,われわれにはまねのできない作業だ。
 学生諸君にも推薦したいと思っているが,それ以前に,ここ数日の通勤の往き返り,僕自身が楽しく読ませてもらった。
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by kriminalisto | 2005-05-18 09:16 | 日記・コラム・つぶやき
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